構造多型(Structural Variation, SV)
ヒトのゲノムは、ほとんどの部分が同じ配列を持っているが、ところどころで個人によって異なる部分があります。これを「多型」と言い、その中でも、50bp以上の大きさの変異ことを構造多型と呼びます。変異のパターンに応じて、欠失、挿入、重複、逆位、転座などに分類されるが、これらが混在した複雑なパターンを示す構造多型も存在します。通常は、塩基対数の小さい構造多型ほど数が多いが、染色体レベルで起こる大きなサイズの構造多型も存在します。
構造多型には、以下のようなタイプがあります:
欠失(Deletion, del):ゲノム配列の1つ以上の塩基(多くは~数塩基)が失われた形態である。挿入と並び、構造多型の中では最も多く存在する。
挿入(Insertion, ins):ゲノム配列の特定の位置に別の1つ以上の塩基(多くは~数塩基)が挿入された形態である。挿入配列で最も多くあるものが、内在レトロ因子が挿入されたタイプで、ミトコンドリア配列やウイルスゲノム配列が挿入されたタイプもある。欠失と並び、構造多型の中では最も多く存在する。
重複(Duplication, dup):ゲノム配列の1つ以上の塩基(多くは~数塩基)が重複して元の3´側に挿入された形態である。欠失や挿入に比べて数は少ないが、重複された領域内に遺伝子が含まれる場合、通常と異なる遺伝子発現パターンを示すことが多いため、遺伝子機能の喪失を引き起こす欠失と同様、疾患との関わりが多く報告されている。
逆位(Inversion, inv):ゲノム配列の1つ以上の塩基(多くは~数塩基)が元の配列と逆方向かつ相補的に変換されている形態である。構造多型のタイプの中で最も数が少ない。
転座(Translocation):ゲノム配列の一部が染色体内もしくは染色体間で移動した形態である。
これらの構造多型は、遺伝子の働きに影響を与えたり、病気のリスクに関わったりすることがあります。