レスベラトロールは寿命延長に効果なし?|小型霊長類での検証結果

レスベラトロールは、代謝やエネルギーバランスに影響を与える抗老化作用を持つポリフェノールであり、カロリー制限と似たような効果が期待できると考えられていました。しかし、糖尿病や認知症などの加齢に伴う疾患の発症を遅らせ、寿命を延ばす効果について、ヒトに近い動物、例えば霊長類では、まだ実証されていませんでした。
最近、発表された「Resveratrol does not mimic the positive effects of calorie restriction on lifespan in Microcebus murinus」という論文によると、レスベラトロールは、寿命延長の効果が期待できない可能性が報告されました。
今回はこの論文について、ご紹介します。
🔍 研究の背景と目的
カロリー制限は、加齢に伴う疾患の発症を抑え、寿命を延ばす非遺伝的な介入として知られています。
レスベラトロールは、赤ワインやブドウに含まれるポリフェノールで、カロリー制限と似たような効果を発揮する物質として注目されてきました。
しかし、長寿の霊長類でレスベラトロールが本当にカロリー制限のような効果を持つかどうかは未解明でした。
この研究では、小型の霊長類「ハイイロネズミキツネザル(Microcebus murinus)」を対象にして、レスベラトロールの長期摂取が寿命や健康、脳の大きさなどにどのような影響を及ぼすか調べました。
👥 研究デザイン
対象:オスのハイイロネズミキツネザル(33匹)
介入群:18匹(1日あたり体重1kgあたり200mgのレスベラトロールを摂取させた)
コントロール群:15匹
方法:両群ともに同じカロリー(105 kJ/日)のご飯を摂取させ、認知機能、運動能力、MRIによる脳構造、病気の発症、死亡までを長期的に追跡した。
📊 主な結果
🔹認知機能・運動能力
中年期(6歳以降)で、レスベラトロールを摂取させた介入群は、作業記憶(バーンズ迷路)や運動能力(ロータロッド、高ジャンプ)で優れた成績を示した。
これは、レスベラトロールに筋力の衰えを抑える効果がある可能性を示唆している。
🔹脳の構造(MRI)
介入群では、高齢期に灰白質の萎縮が早くかつ広範囲に起こった(特に扁桃体、感覚野、帯状皮質など)。
一方、コントロール群では萎縮は限局的であった。
白質の萎縮は両群で見られたが、介入群では後部領域に強い萎縮があった。
🔹寿命
介入群の寿命の中央値は7.9年、コントロール群は6.4年とやや長くなった。
しかし、加齢に関連する死亡割合や全体の死亡率に有意な差はなかった。つまり、レスベラトロールが寿命の延長に効果的とは言えない。
🧠 結論
レスベラトロールの長期摂取は、中年期の認知・運動能力の改善には寄与するが、寿命の延長や加齢に伴う疾患の予防にはつながらなかった。
むしろ、高齢期には脳萎縮を加速させる可能性がある。
この研究は、カロリー制限の完全な代替に、レスベラトロールはならないことを、霊長類で初めて明らかにした。
👉 補足
使用されたレスベラトロールの用量(200 mg/kg/日)は、ヒトの有効量(7〜14 mg/kg/日)より高く、用量依存性の副作用の可能性も示唆されています。
また、この研究はオスのみで行われたため、性差による影響は今後の課題となります。
このようにいくつかの限界があるので、レスベラトロールに寿命延長の効果があるかは、更なる研究が必要です。
Pifferi, F., Terrien, J., Marchal, J., Dal-Pan, A., Djelti, F., Perret, M., Epelbaum, J., Blanc, S., Picq, J.-L., Dhenain, M., & Aujard, F. (2025). Resveratrol does not mimic the positive effects of calorie restriction on lifespan in Microcebus murinus. Communications Biology, 8(331). https://doi.org/10.1038/s42003-024-07387-9