NMNは脂肪と血糖に効く?12件の臨床試験を徹底分析
近年、“若返り成分”として注目を集めているNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)。
サプリメント市場では「エネルギーが湧く」「血糖値や脂質を改善」などのうたい文句が並びますが、実際のところ、その効果はどこまで科学的に証明されているのでしょうか?
2024年8月に発表された最新のシステマティックレビューとメタアナリシスでは、12件のランダム化比較試験(RCT)、計513人の成人を対象に、NMNの摂取が血糖値・脂質代謝・身体機能などに与える影響について精密に検討されました。
🔍 ヒト試験を集めて検証した“信頼できる”研究とは?
2024年に発表された研究は、NMNの効果について最も信頼性の高い方法である「系統的レビューとメタアナリシス」を行ったものです。
簡単に言うと、「過去に行われたすべての信頼できるヒトを対象とした試験をまとめて分析し、全体としてNMNが効くのかどうかを検証した」というわけです。
対象になったのは、計12件の臨床試験(参加者合計513名)。評価されたのは以下のような項目です:
・血糖値(空腹時血糖、HbA1c)
・血中脂質(LDL、HDL、総コレステロール、中性脂肪)
・インスリン感受性
・体重やBMI
・NADの血中濃度
📊 結果は… NADは上がるが、代謝は“大きな変化なし”
研究の結果、最もはっきりとした効果が見られたのは次の点:
・NMNを飲むと、血中のNADレベルが有意に上昇する
これはつまり、「NMNは体内でしっかりと吸収され、細胞内のエネルギー代謝に使われるNADという物質を増やすことができる」ということを意味しています。
一方で、
・血糖値、コレステロール、体重などの代謝指標には、全体として有意な改善は見られなかった
というのが今回の結論でした。
🍔 ただし、肥満の人には“中性脂肪”が下がる可能性!
興味深いことに、過体重または肥満の参加者に限定した解析では、中性脂肪(トリグリセリド)の値が有意に減少していたことがわかりました。
これは、NMNが肥満の人や代謝異常のある人には、より効果的に働く可能性があることを示しています。
⚠️ 注意したいポイント
この研究でもいくつかの限界点が指摘されています:
・試験期間が比較的短い(多くが8〜12週間)
・サンプルサイズが少なめ
・用量や製剤の違いにばらつきあり
・一部の研究で偏りの可能性(バイアス)
つまり、「NMNはすぐに全員に劇的な効果がある魔法の成分ではない」ということ。ただし、「長期的に体の土台を整える栄養素としては十分な可能性がある」とも言えるでしょう。
✅ まとめ
・NADを増やす効果は科学的に実証された
・血糖・脂質への効果は明確な改善はなかったが、肥満者には中性脂肪を下げる効果の可能性あり
・今後は長期・大規模研究が期待される段階
「NMNってどうなの?」と気になっていた方へ
すぐに痩せたり血糖値が下がるわけではないけれど、体の内側から“エネルギーをつくる力”を支える栄養素として、NMNは期待が持てる成分です。
Zhang, Z., Gao, Y., Zhao, X., Wang, Z., Xu, X., Wang, Y., & Wang, J. (2024).
Efficacy of oral nicotinamide mononucleotide supplementation on glucose and lipid metabolism for adults: A systematic review with meta-analysis on randomized controlled trials.
Frontiers in Pharmacology, 15, 1436597. https://doi.org/10.3389/fphar.2024.1436597